2011年11月8日火曜日

財政出動論21 実体経済からみた円高要因

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     佐々木融『弱い日本の強い円 (日経プレミアシリーズ)』では、円高の原因については、 長期的には、日米の物価上昇率の違い、中期的には、日米 の金利差にあると考えているようだ。

 ここでは「実体経済」の観点から「強い円」の問題を考えてみよう。

    実体経済を中心に考える意義は、一つは為替問題の「ファンダメンタルズ」を構成する重要な要素が実体経済だと考えるからだ。ファンダメンタルズのもう一つの構成要素は「国際資本市場」ということになるが、現代経済学では、一般に資本市場は効率的で実体経済の変動に即応し(資本市場は実体経済に)同調して変動すると考えられているから、これも実体経済を中心に考えて良い理由になる。
(・・・もっとも、国際的な資本市場は、国際的な実体経済を反映する一方で、かなり大きな割合が、各国国内独自の実体経済を反映するので、その意味で、国際的な資本市場が国際間の実体経済を単純に反映すると言い切るには、問題があるかもしれない。しかし、資本市場側からみれば、全体として経常収支の各項目が示している実体経済の動きは十分「ファンダメンタルズ」だと考えて良いだろう)。
    こうした意味で、長期では、実体経済の動向が為替レートを決定していると考えてよいと思う。ここでは、こうした観点から長期の問題を考えよう。短期のゆらぎ(というには大きすぎるが)をもたらす資本市場が係わる要因は、ここではあまり考えない。こうした中長期の観点で、しばしば為替レート変動の要因と考えられがちなものとして、その国の国力とか財政赤字とか成長力などがあるが、これらは一時的あるいは部分的に関連があるように見えても、それは疑似相関というべきものだ。長期的には、為替レート変動の要因は、経常収支(その裏返しとしての資本収支)で理解できる。ま、ほとんど同語反復的で当然なのだが。

1 輸出立国政策と為替レート

    ここでは簡単化のため、内外金利差などの資本市場の影響を中立と考え、輸出入バランスのみで考えてみよう。
    為替レートが経済に大きな影響を与える原因として、純輸出(=貿易収支黒字)が各国経済の「需要」として組み込まれているという問題がある。自国通貨が高くなると、輸出が減少し、純輸出も減少する。それは国内企業にとっての需要縮小だから、景気動向に大きな影響を及ぼす。
    特に、国内景気が純輸出に大きく依存している国では、自国通貨高は大きな問題である。このため、純輸出を恒常的に高く維持しようとする政策をとる国がある。こうした政策を「輸出立国政策」と呼ぼう。

(1)純輸出維持と資本収支
    例えば、仮に資本収支の貸し借りが1,2年以内に解消されなければならないという規制が国際間にあるとしよう。
    このとき、資本収支は中長期でプラスマイナスゼロにならなければならないから、貿易収支も、中長期的にプラスマイナスゼロになるように為替レートが自然に調節される《注》。
      注)より正確には所得収支などを加えた経常収支で考えるべきだが、ここでは、簡単に
          するために「貿易収支」で考える。
    このような条件下では、『輸出立国政策』は取り得ない輸出立国政策を実現するには、本来あるべき為替レート《注》よりも、自国通貨安の状態が継続する必要があるのだ。
        注》ここでは、本来あるべき為替レートとは輸出入がバランスするレートである。

(2)輸出代金の自国通貨への換金
    純輸出分の輸出代金を輸出企業が全額自国通貨(以下、わかりやすくするために「円」とする)に換金するためには、相手国通貨(以下、ドルとする)を売って円を買うことになる。これは円高をもたらす。純輸出分の輸出代金全額を円に替えて国内で使おうとすると、円買いドル売りで円高が生じ為替レートの変化を通じて資本収支がプラスマイナスゼロになる。このとき、必然的に貿易収支もプラスマイナスゼロになり、純輸出はゼロとなるそのように為替レートが調節されるのである。純輸出があるとき、その分だけ売上げが上がっているように見えるが、実は、その輸出代金全額を円に交換すると、実は売上げはまったく上がっていなかったことがわかる。

(3)純輸出維持には純輸出分の輸出代金を相手国資産として保有する必要
    (2)のようにならないためには、純輸出分の輸出代金をドルのままで相手国に置いておく必要がある。その結果、企業は、海外のドル資産(ドル債権)で代金を受け取ることになる。その金は、国内での円での支払いに使えないので、仮に、純輸出がGDPの5%だとすると、国民は100働いているが、国民が受け取る金額《注》は95しかない
        注》受け取る形は、賃金、株式配当、利子、下請けへの仕入れ・原材料代金(これら
            も、結局下請企業の賃金や配当等に分解されていく)などである。

    純輸出の5%分は、海外債権、海外資産として日本企業のBSには計上されるが、国内には還流しない。配当にも使えないから、結局「内部留保」となる。そして、それは結局、海外工場の建設などに使われ、日本の輸出力を削減する方向に働くことになる。
   つまり、純輸出の拡大は、国民の所得を増やすわけではなく(日本企業の所得は増えるが)、国内の内需に寄与しない・・・直接には。

    しかし、輸出が拡大を続ければ、企業は、輸出製品を生産するために設備投資を活発化させる。これは、内需に大きく寄与する。2000年代の輸出増加による好景気(ただし実感なき)の原因はこれである。・・・『財政出動論17 財政出動と抑制の30年史概観』の中段参照

(4)政府の為替介入と外貨準備増減
   もっとも、企業は、それぞれ独自の経営判断をしている。だから、全額を円に換金する企業もある。そうした企業の換金の程度は、日米の金利差などによって左右される。また、国内が不景気だと、売上減少で国内での支払い資金が不足すれば、企業はドル資産を売却して円に替えようとする。これは円高要因となる。

   こうした企業の動きは、為替レートの変動を生む。したがって、政府は、これを安定化し、かつ景気対策として輸出立国政策をとる必要があるなら、円安を維持するために為替に介入し円を売ってドルを買うことになる。買ったドルは「外貨準備増減」として蓄積される。企業が純輸出分の全額を円に換金しても、政府が輸出立国政策をとっているなら、政府がその同額を逆にドルに換金して海外資産を増やすので、全体として国民の所得が純輸出分だけカットされていることは変わらない

    この結果、日本や中国のように、輸出立国政策をとる国の外貨準備は巨額にふくれあがることになる。

(5)円建輸出の増加
    では、円建の輸出が増加した場合はどうだろうか。これは支払い側の貿易相手国が日本企業に支払うために外為市場で円買いを行うから、支払い時点で直ちに円高要因になる。今後、円建の貿易が増加していくと、為替レートは、貿易収支をより直接に反映しやすくなるだろう。あとは、内外金利差などの資本市場的な要因で為替レートが左右される程度が高くなる。

(6)所得収支黒字の増加
   ここまでは、経常収支の中で貿易収支以外を無視してきたが、特に2000年代に入ると所得収支の黒字が大きくなり目立つようになってきた。これは、当然、円高要因である。
   この所得収支黒字の原因は、過去の資本収支の赤字、つまり貿易収支の黒字(純輸出分)で積み増された海外資産(海外投資)がリターンを返すようになってきたことにある。
   では、これは、国民にとってよいことだろうか。所得収支の黒字分は、貿易収支の黒字分と合わせて経常収支の黒字となっている。国際収支の構造を見ればわかるように、経常収支の黒字は、資本収支の赤字+外貨準備増減の増の合計と恒等的に一致する。つまり、所得収支の黒字もそのまま海外資産に再投資されている。国内で使おうとすると円高になって、輸出立国が維持できないからだ。所得収支の黒字は、輸出立国政策を続ける限り国内には還流しない。つまり、国民の所得の増加には寄与しないのである。
   もちろん、企業のB/Sには載るので、日本企業」は成長する。だが、「日本経済」にはあまりメリットはない。輸出立国政策を続ける限りは、円高要因であり、政府の為替介入必要額を押し上げる。そして、政府の介入も、どこかの時点で円高を支えきれなくなり、円でみた海外資産の減価を伴いながら(円高の進行に応じて、ある場合には急激に、ある場合には少しずつ、段階的に)為替レートのアンバランスは解消され続けていくことになる
    おそらくは、現実問題として、政府等によるドル買い支えにはある程度の限度と言えるような水準があるだろう。その水準までの枠は、従来は、いわば貿易黒字だけに対応していればよかったものが、所得収支黒字が増えたことで、その対応に食われて、対応可能な貿易黒字の規模が圧縮されつつあると考えられる。
   したがって、今後、アバウトには所得収支の増加分だけ貿易黒字額は圧縮されていかざるを得ない。それは将来は、最終的に貿易赤字が常態となる時代が来ることを意味する。それは、アバウトには企業や産業の責任に帰するような競争力の問題ではないのだ。為替レートの問題なのである。

2 実体経済からみた円高要因

    こうした点を踏まえて、実体経済からみた円高の要因をあらためて考えてみよう。

    「実体経済から見た」通貨の為替レート変動の要因としては、長期的には、「輸出競争力の差」(厳密には経常収支の黒字を稼ぐ力)だと考えるのが自然である
    そして物価上昇率の差」は、中期的に輸出競争力に反映されることで、間接的に為替レートを左右すると考えられる。また、金利差」は国際資本市場を通して短期的に資本収支を動かすことで為替レートを左右すると考えられる。
(1)物価上昇率の差と輸出競争力
    「物価上昇率の差」は、中期的に、物価上昇率の低い側の国=日本の生産コストを相対的に低くしていくから、日本の輸出競争力は高くなり、それは経常収支黒字を増加する方向に寄与する
    しかし、円高は、それを簡単に解消してしまう

(2)海外資産の増加と為替レートの不安定化
    逆に輸出競争力を維持するためには、円高になっては困るわけで、日本経済は、経常収支黒字分(=資本収支の赤字分として)を海外資産として積み上げ続けざるを得ないことになる・・・つまり経常収支黒字と同額を資本収支赤字で相手国に貸すことで、円高を抑制することになる。
    しかし、相手国に貸した海外資産は、経常黒字の継続と共に大きくなっていく。これは為替レート不安定化の原因である。必ずどこかのタイミングで、海外資産の取り崩し(=ドル売りで円買い)で円高が発生する・・・確率が上昇することになる。

(3)生産性上昇率の差と輸出競争力
    (1)では「物価上昇率の差」で説明したが、同じことは日本の「生産性の上昇」で経常収支の黒字が増えることでも生ずる。この意味で、物価上昇率の差のみによる説明よりも、その双方(あるいはその他の要因の影響)を含む「輸出競争力の変化」で見る方が、為替レートをよく理解できると考える。

(4)ギリシャ問題
    このように、経常収支黒字(=資本収支の赤字)によって海外(ドル)資産が蓄積していくと、一定の頻度で、それを解消しようとする動きが生じる。つまり円高である。それによって、日本は、実質的に、その円高分は「債権を放棄」することになる。

    同じことが、ギリシャ問題でも起きている。経常収支赤字(=資本収支黒字)で積み上がったギリシャの対外負債の解消圧力が今回の危機の原因である(財政赤字はその現れの一つにすぎない)。
   ただし、ユーロ圏内では同一通貨ユーロを使っているから、日本のように為替レートの調節では「債権放棄」はできない。その代償として、本当の「債権放棄」が必要になっているのである。
    日本が円高で実質的に「債権放棄」したように、ドイツは、ギリシャに対して債権放棄をすべきと考える。それは、輸出立国政策を取る国の義務のようなものだと考える。実際、それを選択するしかないのだ。理由は、ユーロの導入でドイツが巨大な恩恵を受けてきたからだ。ドイツは、1991〜2000年の間、経常収支はコンスタントに1%前後の赤字だったが、ユーロが導入された2002年にGDP比で2%程度の黒字になってから、順次経常黒字を増加させ、リーマンショック前の2007年の経常収支黒字はGDP比で7.5%に達した
    その原因は、ユーロの導入である。ユーロが導入されていなければ、ドイツの競争力に応じて為替レートがマルク高傾向となり貿易収支をバランスさせようとする力が働く。ところが、ユーロ導入後は、為替レートの変動による競争力の変動がなくなり、競争力の差が直接経常収支に現れるようになった。
    実際、ギリシャの経常収支赤字はユーロを導入した2004年には5.9%だったが、2007年には14.3%の赤字へと拡大している。おおざっぱにユーロ圏の北に位置する各国の経常収支の黒字は増加傾向である一方で、南の各国の経常収支の赤字は増加傾向である。これは南の各国への投資が増加した(資本収支黒字の増加)ことを意味する。ユーロ導入後、こうした南の各国への投資増加はプラスに捉えられ、それによって、実体経済における競争力の低さのために貿易赤字が上昇していたことが覆い隠されていたと考えられる。この意味で、ユーロは現在の制度による限り持続可能でなかったようにも見える。
    しかし、このユーロ圏市場によって、ドイツは膨大な利益を得て繁栄を続けていたのである。
    かつて第一次世界大戦の巨額の賠償でドイツが苦しんだことを、立場を変えてギリシャに要求している。ギリシャにできないことを要求しても得るものはない。・・・ギリシャの責任は大きいが。

(5)資本市場の「金利差」
    最後に『金利差』の為替レートに対する影響を考えよう。これには政策的な要素もあるわけだが、「実体経済」を中心に考える視点からすれば、まさに日本は、長期停滞下にあって、設備投資などの資金需要がないために低金利が続き、金利の非負制約にひっかかっている、ないしはそれに近い状況にあった。
     このため、リーマンショック前は、円キャリートレード等で、資本収支の赤字(当然、その裏で経常収支の黒字から輸出の増加)が維持されたため、円安になった。

    そもそも日本には強い輸出競争力があったから、本来は徐々に円高が進むべきところだった。ところが、国内経済の長期停滞で国内に資金需要が不足しているために、国内では(名目)低金利が生じ、内外金利差によって資本の流出が維持されたために、輸出に好適な円安が維持されたわけである。

    ところが、その後のリーマンショックで、世界経済が停滞に入り海外資本市場の金利が低下して内外金利差が縮小したため、経常黒字(=資本収支赤字)とそれによって蓄積された巨額の海外ドル資産(の円への換金ニーズ)による円買いドル売り圧力が顕在化し、円高になっている。

(6)根本的な問題は日本の輸出競争力の強さ(経常収支黒字)
     円高は、このように物価上昇率の差生産性上昇率の差内外金利差によって変動するが、根本的な問題は、日本の輸出競争力の強さをバックに資本収支が恒常的に赤字(=経常収支が黒字)であることだ。
    そして、それによって積み上がった海外資産は常に円高圧力として存在している。それによる円買いドル売り圧力をさまざまな要因が強めたり弱めたりすることで、為替レートが変動していると考えられるのである。
    例えば、上記のリーマンショック前までの円安がそうだし、また、国内の景気が悪くなると円高になる傾向があるというのは、上で書いたように、海外資産を持っている輸出企業が国内の不況で売上が減少すると、その国内売上収入が国内での支払いのための資金ニーズに対して不足し、国内での支払い資金を得るために、海外資産の処分が増加し、それによる円買いドル売りが不況の程度に応じて加速されると考えることができる。

3 以上から何が言えるか

    以上のように、実体経済を重視する視点からは、本質的には、日本の輸出競争力が依然として強いことをが根本にありそれによって生じた海外資産の円換金圧力に影響を与えるいくつかの要因(物価上昇率や金利差)の変動で理解できることがわかる。

(1)物価のコントロールに対する含意
    日銀は、物価上昇率を低く抑えて悦にいっている?わけだが、その努力は、結局、間欠的に生ずる円高によって、常に解消されざるを得ないということである。そして、その円高は、予想されない状況で発生し、オーバーシュートも発生しがちなため、輸出関連企業に予期しない打撃を与えることになる。
    つまり、過度にインフレ率を抑制することは、為替レートの極端な変動を通じて、経済に必要以上のダメージを与えるということが理解されなければならない
    したがって、インフレ率のコントロールは、主要な貿易相手国のインフレ率を重要な指標として行うべきと考えられる。主要貿易相手国のインフレ率+生産性上昇率の2国間の格差をゼロないしは低く抑えることを目標とすれば、急激な円高によって経済に打撃を与える事態はかなりの程度避けられることになる。
    つまり、少なくとも、インフレ率のコントロールに関しては(主要な貿易相手国の動向を考慮したものにするべきで)低ければ低いほどよいという視点自体には大きな問題があると考える。・・・もっとも、相手国が高すぎるインフレ率にあるときには、こうした考え方はできないのだが。

(2)円高問題の解決策は不況対策しかない
(説明するとさらに長くなるので、結論だけ書きます。)
   政府は、円高に対しては、為替介入などの対症療法しかしていないが、円高の本質的な問題は、第一に、日本の金利が低いことにあり、その原因は、国内に資金需要がないことにあると考える。その原因は、日本市場に成長の見通しがないために、企業が設備投資を行わないためだと考える。すなわち、不況対策が不十分なことこそが本質的な問題だと考える。
    第二の問題は、日本経済がデフレ的状態にあって物価上昇率が低すぎることだ。これは、恒常的に国内の需要が不足していることが原因だと考える。
    この二つの問題を解決する方法は、個人的意見としては、財政出動しかないと思う

(3)ユーロ危機の原因はドイツにある
    イタリア、フランス、スペインなどの危機はもとより、ギリシャ危機は、ECBが無制限の国債買い上げを宣言して実行すれば、解消してしまう。それを妨げているのはドイツだ。ドイツは自国の立場を理解していない。

2011年10月13日木曜日

「『重不況』の経済学」(2010年11月刊)各章の概要

 「『重不況』の経済学」(新評論)2010年11月下旬刊全体概要)    /《このブログ全体の目次》 
                                        
この本の核は第3章です。第1章は導入部。第2章は第3章へ到達するためのステップ。第4章以降は、第3章を各分野に展開したものになっています。   アマゾンのページ

第1章 [日本経済] 沈みゆく日本 ー構造改革と長期停滞ー        
① 事実の指摘だけですが、日本経済が90年代ではなく2000年代に大きく落ち込んだこと(世界に占めるGDP比が半減)を明らかにしました…もっとも、これはここ1年ほどの間に次第によく知られるようになりインパクトがなくなってしまいました(本書の脱稿は2009年12月))。
② 構造改革」の理論的な根拠が実証的にも崩れている点を整理しました。

第2章 [経済成長] 生産性とボーモル効果からみた経済成長
③ 全体として需要の制約の視点が重要であることをあらためて整理しました。
④ 90年代以降の経済停滞の理由は、生産性の向上に対して生産・販売数量が十分には伸びなかった点にあることをある程度整理しました。……過度の生産性向上論の誤りも指摘(これは、ごく常識的にも見えますが、これに対して主流派の新古典派系の経済学では、セイ法則によって数量は十分に伸びると考える傾向が強いわけです)
⑤ ボーモル効果」とペティ=クラークの法則」を需要制約の観点から捉え直し、「ボーモル効果」については、より精密な成立条件を明らかにしました。
⑥ 成熟した先進国経済では長期的に需要不足が生じる可能性を「プロダクトサイクル」と需要の関係から示しました。
⑦ 開発途上国と先進工業国間にある成長速度の違いの原因の一つとして、需要サイドの観点から、開発途上国が魅力の高い新製品の確率的発生に要する時間を圧縮して切れ目なく「新製品」を投入できるという、いわば「新製品投入時間圧縮型成長」を整理しました。
⑧ 供給制約(資本投入、労働投入、生産性上昇の不足)を前提とする「新古典派経済成長理論」の限界を明らかにし需要の制約の観点を組み入れた新たな成長理論の必要性を整理しました。

第3章 [経済循環] セイ・サイクル ー漏出と貨幣の流通速度ー
⑨ セイ法則」の成立条件の検討から、この法則の「財」の定義に関連して混乱があったことを整理しました……そこでは、「セイ・サイクル」で生産された財の生産費用(賃金、利子、配当)として家計が受け取った資金が「セイ・サイクル財」以外の使途(土地の購入や預金など)に使われる(金融・資産経済への漏出)一方で、金融・資産経済からの還流(土地売却代金の消費への充当や預金の設備投資資金としての貸付)が不足する場合があり得ることに注目しています。
⑩ 「セイ・サイクル」(実体経済)と金融・資産経済間の資金の漏出・環流変動に注目することで経済現象の多くが説明できる可能性を示しました。
⑪ 「輸出立国戦略」による経常収支黒字分が海外債権の形で実体経済(セイ・サイクル)からの漏出となるために内需を抑制すること、また過度の国際競争への対応を迫られることから、国民にとって不幸な選択である部分があることを示しました。(なお、ここでは「輸出立国戦略」とは、内需不足を純輸出でカバーしようとする政策と定義)
⑫ 漏出の観点から、貨幣の流通速度」に関するヴェルナーの解明を説明しました。
⑬ 通常の景気変動と、重い(例えば流動性の罠が生じ得るレベルの)景気変動(これを「重不況」と定義)を区別し、前者では様々な景気変動要因が互いに相殺される結果、利子率の影響力のみが大きく見える一方、後者では、前者では相殺されていた要因の作用の方向が斉一化されて影響力が顕在化し、利子率の影響が低下すること、したがって、そこでは、バランスシート不況論、マインドや市場の成長見通しなど利子率以外の要因で直接に(実質利子率などの利子率を介してではなく)経済を理解すべきことを主張しています。
⑬のb マクロ経済とミクロ経済を結び、ミクロの集計量がマクロに顕在化するメカニズムとして『斉一性』に注目しています。

第4章 [貨幣と経済] 価格投資 ー金融・資産経済と実体経済+「バブル」ー
⑭ 「金融経済の肥大化」の原因の一つがセイ・サイクルからの漏出超過の累積である可能性があり、また「量的緩和政策」がそれに関係している可能性にふれました。関連して重不況対策としての金融政策の有効性に限度があることを示しました。
⑮ 「効率的市場仮説」が完全には成立しない原因に関連して、市場メカニズムを、「コスト抑制」を目的に参加する市場参加者が多数を占めるためにコストが効率的に抑制される実需型価格メカニズム(=主に実体経済に係わる)と、市場参加者の目的が「資産価値の維持・拡大」にあるために価格を抑制するメカニズムが働かない価格投資型価格メカニズム(=主に金融・資産経済に係わる)に分離し、後者では(不完全情報や経済主体の非合理的行動とは異なる要因で=つまり合理的理由で)安定した均衡価格が成立しない可能性があることを示し、さらに漏出・環流の観点とを組み合わせて、「バブル」の形成と崩壊を説明しました。
⑯ 金融・価格投資セクターの短期的行動特性が、実体セクター企業の能力や競争力に悪影響を与えていることを示しました。

第5章 [先進国経済] 非価格競争 ー先進国と非価格競争戦略ー
⑰ 新古典派成長理論や内生的成長理論などのサプライサイドの成長理論では視野の外にある需要サイドの(先進工業国の)豊かな市場(それはその国が高コストであることを意味します)がイノベーションに不可欠であることを示しました。
⑱ 競争には価格競争と非価格競争があり、企業レベルの(いわゆる)「競争力」は、価格競争だけでなく非価格競争力に大きく依存していることを整理しています。
⑲ 高コストとは高付加価値を意味するため、高コストの先進工業国が高コストを維持し続けるには、非価格競争戦略を取るべきことを(改めて)主張しました。

第6章 [政府] 北欧型政府論 ー需要不足と政府支出ー
⑳ 一国経済と政府財政が相互補完関係にあり一体不可分のものであることを明確にし、一国経済全体から見れば、特に成熟した先進国では、民間に代わり政府が需要を作る「北欧型政府にも意味があることを示しました。
㉑ 第3章のセイ・サイクルの検討に基づいて、政府の続的な「財政赤字」の限度に関する基準の一つとしてGDPギャップを指標とする「マクロ経済補完基準財政規模」に注目すべきことを示しました。

補論 [経済学理論] フリードマン対ガリレオ ー経済学の再構築ー
㉒ 新古典派経済学の研究手法には大きな問題点があり、単に「説明力が高い」だけでは、その仮説が正しいことの証明にはならず、説明範囲が広いことが重要であることを明らかにしました。
㉓ 自然科学の発展は、例外を発見して、それを理論の中に取り込むために新しい統一理論が出現することで発展してきたのに対して、経済学では、専ら例外を排除する研究手法をとってきたために発展が停滞している可能性があることを整理しました。

注)上記で「示しました」とあるのは(もちろん)証明したというレベルを意味しません。

2011年10月6日木曜日

ブログ全体の目次

目次
《新しい経済学  New Economic Thinking》 
                                                                        〜セイ法則不成立のとき何が起きているか
《財政出動論》
財政出動論36 財政赤字・政府累積債務の持続可能性のその後
財政出動論35B 資金循環で見る「異次元緩和」後の1年
財政出動論35 「異次元緩和」開始後1年〜の日本経済
財政出動論34 輸出立国政策と企業の内部留保
財政出動論33 消費増税の恒久的な影響と短期の影響
財政出動論32 「財政レジーム」転換と「長期停滞」
財政出動論31 公共投資、設備投資の価値と三面等価
財政出動論30 三面等価の原則と付加価値と財政支出
財政出動論29 持続するユーロ圏の停滞
財政出動論28 新著『日本国債のパラドックス・・・』紹介Ver.2
財政出動論27 新著『日本国債のパラドックスと財政出動の経済学』紹介Ver.1
財政出動論26 財政赤字の主因は放漫財政でなく設備投資の変動
財政出動論25 リカード中立命題と負担の次世代先送論
財政出動論24B 97年消費増税の影響を家電でみる
財政出動論24 消費税増税の影響(97年増税の例)
                              世界の実質GDPの推移
財政出動論23 リーマン後4年間の財政金融政策
財政出動論22 貨幣流通速度と不況期資金余剰
財政出動論21 実体経済からみた円高要因
財政出動論20 米国の消費需要と医療制度
財政出動論19 流動性の罠と資金需給、国債金利
財政出動論18 現代経済学の手法と自然科学の比較
財政出動論17 財政出動と抑制の30年史概観
財政出動論16 構造改革は日本の停滞を解決しない
財政出動論15 財政赤字問題の基礎=貯蓄問題
財政出動論14 インタゲと国債利払い
財政出動論13 構造改革が必要なのは米国だ
財政出動論12 財政出動とリカードの公債中立命題
財政出動論11 需要項目から大恐慌の回復要因を見る
財政出動論10 目次(〜9)
財政出動論9 財政持続可能性と負債償還能力
財政出動論8 財政赤字問題における長期と短期的観点
財政出動論7 財政赤字・政府累積債務の持続可能性
財政出動論6B 需要不足対策の評価
財政出動論6 「需要」とは何か
財政出動論5 交わらない「短期」と「長期」の視点
財政出動論4 橋本財政改革が生み出した恒常的な財政赤字
財政出動論3 大恐慌期の金融政策の有効性
財政出動論2 なぜ財政出動論?
財政出動論1 デフレ脱却に対する財政出動の有効性
◎日本で、これまで散々公共事業をやってきたのに駄目だったのはなぜ?
名目では構造改革期に世界シェアを半減させた日本経済
輸出立国政策は日本国民にとっては必ずしも良い政策ではない
「『重不況』の経済学」各章の概要
「『重不況』の経済学」(新評論)2010年11月下旬刊全体の概要

《その他》
日本経済:町工場の技術幻想とイノベーション等
危急の問題対応のためのマネジメントからみた組織論
日本の行政システムは非効率か?
通説化している「古九谷は伊万里焼」説の物証はねつ造だった

2011年8月26日金曜日

財政出動論20 米国の消費需要と医療制度

    拙著「重不況の経済学」(ちなみにアマゾン)は、日本の長期停滞を重要なテーマとしているが、これ(長期停滞)は短期の問題である。この本自体は基本的には短期の問題を扱っているのだが、この本の第2章、第5章はほぼすべてが、また第6章は過半が、さらに第4章もある程度は、長期の問題を扱っている。これは短期、長期の問題は相互に関連があるからだ。
    ここでは、この「長期」の問題のうちの先進国の需要の問題を考える。
                                                                                     ・・・《このブログ全体の目次》 
                                後段部分に若干記述追加23.8.30-31。権丈先生からの引用を後段注に追加23.10.24

1 先進工業国の需要不足仮説
   さて、拙著では「長期」に係わる仮説の一つとして、先進工業国では、様々な耐久消費財の普及率が上限に達する結果、耐久財の消費は更新需要が中心となるために需要不足が生じやすく、それは耐久財生産の設備投資の低下にも結びつき、結局、消費、設備投資の両面から、先進工業国では需要不足経済になりやすいと考えている。
(なお、これに対して開発途上国は様々な耐久財の普及率が低いために相対的に耐久財の需要が根強く、したがって、成長を続ける開発途上国は、常に需要圧力の強い経済(したがってかつての日本の高度成長期のように(?)常に供給不足気味の経済)となりやすいと考える)。

2 例外としてのアメリカ
    しかし、実は、先進工業国の中でも米国だけは、需要超過、供給過少経済なのであり(それは米国の貿易収支がコンスタントに赤字であることからも理解できるだろう・・・この点については財政出動論13《構造改革が必要なのは米国だ》でもふれた)、この仮説では例外となっていたのだ。次のグラフのように、米国の民間最終消費はGDPの7割を占めており、日本よりも10ポイント以上も高い。
    米国は製造業が競争力を失っているために設備投資が弱く、また政府の最終消費が小さい。だが、残る民間最終消費が根強いことは、米国経済が全体として長期にわたって貿易収支の赤字を続けてきていることで明らかだ。財(生産物)の需要が国内の供給力よりも強いから貿易収支が赤字になるのである。米国経済は、リーマンショックまでの過去20〜30年ほどは、消費を牽引力に、多少の変動を伴いつつも安定した成長を続けてきたのである。
        注)ただし、貿易赤字が大きいために、多少民間最終消費は大きく見えているかもしれない。
図1
                          データ出所:国連統計部 National Accounts Main Aggregates Database なおデータは2007年のもの

3 先進工業国の消費需要(まあ内需)対策
    こうしたことを受けて、(第6章では、先進工業国に必要な(長期的)経済政策の一つとして消費を拡大するいくつかの方策を提案しているが)、その中で、「需要の根強い米国には需要を刺激する制度があると考えられるから、それを研究すべきと書いている。

    そして、その具体的な例として、米国の税制や文化には住宅投資を促進する仕組みがあることを上げている。これは、結局、今次のリーマンショックに係わる世界同時不況の原因となったものでもあるのだが、うまくコントロールできれば、先進工業国でも消費(+住宅投資)需要をコンスタントに刺激することが可能だと考えられる。

4 米国の医療制度
    しかし、それだけでは、米国の強い需要を説明することは困難のように思っていたのである。巨額の軍事費もあるが、それは政府消費と固定資本形成に含まれれている。
・・・ということで、文化とか社会システムなどの影響かと思っていたのだが、今回もう一つ具体的な原因に気づいたので、ここでそれを掲げてみる。
   それは米国の特殊な(?)医療制度である。

    次の図2にみるように、米国の総医療費がGDPに占める比率は15.7%であり、日本の8%のほぼ2倍先進国の中で突出して(異常に)高い。これは、米国の公的医療制度は主に高齢者や貧困家庭しか対象にしておらず、それ以外が民間医療保険によっていることなど米国の医療制度の特殊性と係わっている可能性が強い。

    また、この米国の医療制度は、4千万人以上に上る無保険者を生み出している。我が国では、一応建前として、お金では治療レベルの差は生じない・・・違うのは、病室が豪華な個室〜6人部屋の違いとかの治療以外の待遇の差だけである。だが、米国では、お金の力が治療のレベル、そして生命を左右している。

   いずれにせよ、米国の医療制度の特殊性が、こうした膨大な医療費を生んでいると考えられる。その結果、米国民は、多大な医療費を負担している。

図2
データ出所:世銀  World Development Indicators 2010 なお、データは2007年のもの

    なお、「公的医療費以外の医療費」には、市販薬、紙おむつ、メガネや健康用品などが含まれている。米国以外の国々のそれの大半は、これらである。これに対して、米国の場合は大半が民間医療保険料の支払い治療の際の保険対象外部分の自己負担無保険者の治療費支払いなどである。
    ちなみに、これをみれば、図1で、支出項目で見た米国の政府最終消費が低い理由がわかるだろう。米国が『小さな政府』に見えるのは、米国の医療保険制度が国民全体をカバーしていないからなのだ。

5 米国家計の消費支出に占める医療費
    これを家計の消費支出で見たのが次の図3である。この図のように、米国の家計は、医療費として消費支出の約2割《日本の約5倍》をコンスタントに支出している。

    医療費は、直接、間接に生命に係わるものだから、耐久消費財のように不要不急のものとして支出を抑えることはできない。実際、お金がなくてぎりぎりまで医療を受けないというような例も少なくないようだが、様々な支出項目の中での優先順位は極めて高いはずである。医療費が大きい分、他の項目を節約しているとしても、常に医療費は、消費に対して圧力となっている。

    発病やけがは突発的であることも多いから、安くてよい病院を選んでいるひまもない。また、加入している民間保険が指定している医療機関で治療を受けなければならない。さらに、その際には保険の負担対象外部分(契約している民間保険毎に保険負担の対象が異なるし、査定もあるのが普通のようだ。高額な掛け金の保険であれば安心だが、一般家庭ではそうもいかない)は有無を言わさず家計が直接支払うことになってしまう。医療費は、計画的には抑制できない部分が大きい。計画的な抑制を行うとしたら、それは保険料の安い医療保険を選択するということになるが、それはカバーする疾病の範囲が狭いのが普通だ。

    突発的だから、日常的には、保険料以外は考えずに他の消費を行っていて、医療が必要となると、医療保険の対象外部分が通常の支出の上に有無を言わさず上乗せされる。これは、特に4千万人超と言われる無保険者の場合に典型的だ。彼等は、現実の生活費に追われ、未来に対する備えとしての医療保険料には回せる資金がない状態で消費をしている《消費性向が高い》。また、無保険者に準じて保険対象範囲の狭い安い医療保険に加入している人々もこれに準ずる。彼等も、病気、けがになれば、否応なく医療費の支払いに直面する
             注)米国では虫垂炎手術は、ニューヨークでは243万円、ロサンゼルスで194万円(2000年AIU調べ。1ドル105円換算)
                   だという。なお、虫垂炎の手術は、他の国では少なくとも4,5日の入院が普通だが、米国では、ベッドの回転率を高める
                  ために、平均1日入院で退院させてしまう。
図3
データ出所:国連統計部 Statistical Yearbook, Fifty-third issue
 なおデータの年次は、日、伊、仏が2007、加、独、米が2006、英が2005のもの

6 米国の消費構造とサービス業の生産性その他
    ① 消費水準
    こうした必須性・突発性があり節約が困難な医療費支出が常に家計支出を押し上げており、米国の消費の水準が高い原因になっていると考えられる。

    ② 輸入の活用
    また、この結果、食品・飲料・たばこ等、住居・水道・光熱費関係の支出が圧縮されており、こうした分野の多くで海外からの低廉な輸入品が活用されている可能性が強い。ドル高政策による輸入促進は、こうした現状に対する政策としても合理的である部分がある。
            注)もちろん、ドル高政策は、金融立国にも不可欠でもある。

    ③ 米国の第3次産業の生産性の高さ
   次に、医療費の突出は、米国の民間消費支出の中で「サービス」分野の割合を大きくしている。米国は、我が国に比べて第3次産業の「生産性」が高いが、これは、米国では第3次産業に占める医療分野の割合が非常に高いことが影響している可能性が高い。生命や激しい苦痛にかかわる費用は、現実に値切ることは難しいからだ。これが高付加価値を生み、米国の第3次産業の生産性を高くしていると考えられる。
           注)もちろん、金融分野のウエイトが高いというのもあるだろうし、商業では、サービスの徹底した切り詰めというのもあ
                るだろう。なお、米国の第3次産業の生産性の高さについては、《財政出動論13(構造改革が必要なのは米国だ)》で
                 一旦整理している。

    ④ 自由競争になじまない医療分野
    米国の医療制度は、他の国よりも市場の競争性が高いとされるが、こうした状況を見ると、医療のような情報の非対称性の高い分野、かつ生命の危急にも係わり、治療ニーズの発生が家計から見ると間欠的かつ突発的なことが多く、その際にサービス分野の選択も自ら決定できない(脳腫瘍なのに消化器内科にかかるわけにはいかない。つまり代替性が弱い。)場合が多いし、危急の際に医療機関を選ぶ時間もない場合が多く《注》、加入している民間医療保険が指定する病院の利用が義務となるといった、利用者側の選択肢が狭い特殊なサービス分野(医療サービス)は、単純な市場競争にはなじまない可能性が強い。
        注)例えば、利用者側が医療機関や担当医師の能力について十分な情報を持ちにく
            いこと(情報の非対称性)、突発的で危急の場合には医療機関や医師を自由に選
            択できないことなどは、市場競争を制約するため、自由競争市場では供給側が有
            利になる。米国の総医療費の突出の原因は、こうした自由競争制度が根本にある
            可能性が強い
                注の注)以下は慶應義塾大商学部の権丈教授の「勿凝学問 372pp.4-5 から
                        ・・・「医療経済学研究者の間では、そもそも医療サービス市場には、市場
                        理の大前提となっている、供給者の行動から独立した消費者の需要曲線
                        存在しないという主張が有力だからです。 実は新古典派を含めて、大 
                        医療経済学研究者が支持している「医師誘発需要理論(仮説)」は、原
                        には医療サー ビスの需要曲線の存在を否定するものです。1999年に
            ランダ・ロッテルダムで開かれた国際医療経済学会(iHEA)第 2 回 世界
            のハイライトとなった、「(医療の)需要曲線は廃棄されるべ きか?」
            セッションでは、・・しか意外なことに、需要曲線の擁護派(新古典派)
                        最後には需要曲線に基づいて現実の政策決定をするこ とはできいこ
                        とを認めました。         23.10.24追加  24.1.17リンク修復ほか
                この結果生じた高額の医療費は、低所得層の選択を限定し、それは、さらにこ
            の分野の市場の自由な競争を阻害している。